最近、なんだか「夜になると眠れない」と感じることはありませんか?
睡眠不足は、翌日の仕事や勉強に悪い影響を与えてしまうため「なんとか寝よう」と、がんばってしまうことがありますね。
しかし、「寝よう!寝よう!」と思えば思うほど、余計に眠れなくなってしまうものです。
夜に眠れないことが悩みとなっているときには、がんばって眠ろうとするのではなく、「なぜ眠れなくなったのか?」を知ることが大切です。
なぜなら、眠れなくなるのには、人それぞれ違うさまざまな原因が関係しているからです。
この記事では、睡眠の重要性について解説したあと、「眠れない原因」・「眠れないことで起こる症状」「眠れない状況を作り出すNG習慣」などもくわしく紹介していきます。
また、眠れない症状を引き起こすことがある病気についてもいくつか紹介しています。
この記事を読むことによって、自分がどうして眠れなかったのかが分かるようになり、熟睡できる方法も知ることができます。
どうぞ、この記事を読んで眠りに対する辛い悩みを解消してくださいね。
眠れない原因よりもとにかくすぐに対策について知りたいかたはこちら
眠れないことが原因で生じる悪影響の代表的なもの5つ
眠れない状況がつづくと、体にはさまざまな悪影響が起こってきます。
まず、眠れないことで生じてくる5つの代表的な症状をご紹介しますね。
眠れないことによる悪影響1.朝起きれない
眠れないということは、寝つきも悪くなるということです。
寝つきが悪いと、眠りにつく時間が深夜以降になってしまいます。
眠りについた時間が遅いことで、自分に必要な睡眠時間が取れていない可能性があります。
このような状態では、自然に目が覚めて起きるのではなく目覚まし時計によって起こされることになるため、朝になっても快適に起きることができないのです。
眠れないことによる悪影響2.日中眠くなる
睡眠時間が短くなると、脳や体はその日に活動した分の疲れを、眠っている間に回復させることができません。
そのような状況では、翌日のパフォーマンスに悪影響を与えてしまうため、日中でもなんとか脳を休ませようとして眠気を起こさせます。
最近では、夜に眠れない人が増加しているため、日中に眠くなる人が増えているのです。
眠れないことによる悪影響3.集中力が続かない
眠れない状況がつづくと、脳や体の疲れがどんどんと蓄積された状態となっています。
集中力は、認知機能(物事を正確に判断する脳の機能)が正常にはたらき、同時にいくつもの情報を正確に処理できることで高められていきます。
そのために集中力を持続させるには、脳がその日の疲れを解消し、さまざまな機能を回復させておく必要があります。
ところが、睡眠が足りていないと、脳の機能を回復させることができないため、集中力が続かないのです。
眠れないことによる悪影響4.怒りっぽくなる
睡眠がじゅうぶんに取れない状態が続くと、脳のはたらきが低下します。
脳では、精神状態をおだやかに保つ「セロトニン」という神経伝達物質が分泌されていますが、脳の疲れがきちんと取れていると、セロトニンはしっかりと分泌されて精神状態も安定しているので、怒りっぽくなることはありません。
ところが、睡眠不足によって脳の疲れがじゅうぶんに取れないと、セロトニンの分泌量も減ってしまい、精神状態が不安定になります。
精神状態が不安定になると、チョットしたことでも気にして落ち込んだり、怒りっぽくなってしまいます。
眠れないことによる悪影響5.体調を崩しやすくなる
睡眠不足は、体の各組織の疲れもしっかりとれないため、翌日に疲れがたまってしまいます。
とくに、免疫(めんえき)細胞は、胃・腸・肺・皮膚などさまざまな組織に存在し、体内に侵入してくるウイルスや病原菌などを退治してくれることによって、私たちは健康な体を維持してくれています。
しかし、睡眠で体の疲労が回復できないと、免疫細胞が弱って病原菌に打ち勝つことができず、体調をくずしてしまうのです。
眠れないのが続くとどうなる?睡眠をとることはこんなに重要!
毎日忙しくしている人のなかには、「眠ることも惜しい」と思っている人もいるかもしれませんね。
しかし、睡眠には「1日中活動した脳と体をメンテナンスする」という重要な役割があり、きちんと睡眠をとらないとメンテナンスすることができないのです。
体にはもともと修復機能が備わっており、睡眠をとることで各組織を修復させることができます。
睡眠が足りていないと、脳や体のメンテナンスをじゅうぶんにできないため、翌日に疲れが残ってしまうのです。
では、睡眠中に脳と体はどのようなメンテナンス・修復をおこなっているのでしょうか?
ここから、「心のメンテナンス」と「体のメンテナンス」に分けてそれぞれくわしくご説明していきますね。
睡眠の重要性:心のメンテナンス
心においては、おもに「記憶を整理&定着させる」・「感情を整える」・「神経のバランスを修復する」などのメンテナンスを行い、心を安定させていきます。
1.睡眠により記憶を整理&定着させる

脳内では、「1日に起こった出来事や学んだことなどを呼び起こし、1つ1つに優先順位をつけて適切な場所へと移して保存する」という作業を行っています。
この作業が正常に行われることで、これまでの記憶を長期にわたって定着させることができるのです。
大人になっても、子供のころの出来事を覚えていることがありますね。
これは、子供のころの記憶が、適切な場所にきちんと移され定着されたことの証であり、この作業が行われることで、昔の記憶もよみがえらせることができるのです。
記憶の整理と定着がきちんと行われることで、その記憶は一生にわたって消えることはないのです。
睡眠は、深い眠りの「ノンレム睡眠」と浅い眠りの「レム睡眠」が、約90分の間隔で交互に起こります。
そして、目覚めるまでに5回~6回繰り返すのが一般的な眠りのパターンです。
睡眠全体のうち「約75%がノンレム睡眠」、残りの「約25%がレム睡眠」で、ノンレム睡眠のときに「脳は休養している状態」になり、レム睡眠のときに「脳の一部だけが活動している状態」になります。
このうち、記憶の整理が行われるのは深い眠りの「ノンレム睡眠」で、脳内では起きているときに体験した場面などを、1つ1つ整理する作業が行われています。
記憶の長期定着が行われるのは「レム睡眠」のときであり、記憶や学習に深く関係している「扁桃体(へんとうたい)」・「海馬(かいば)」という、大脳周辺の一部分が、不要な場面・感情などを取り去って定着させる作業をしています。
じゅうぶんな睡眠がとれていれば、目覚めるまでにレム睡眠を5回~6回起こすことができ、1日の記憶をしっかりと脳に定着させることができるのです。
2.睡眠が感情を整える
脳は、常にさまざまな情報を取り入れ、それを正確に処理して体へと指令を送る作業を行っています。
その1つに、その日に受けたいろいろな疲れを「ストレス」と認識し、各組織にストレス解消の指令を送る作業があります。
たとえば、過度な運動や長時間労働、精神的落ち込みなどを体験すると、脳がそれを「すべてストレス」と判断し、体にストレスに対処するよう指示を送ります。
しかし、体が対処できないほどのストレスを受けてしまうと、脳内に疲労がたまり判断能力が低下してしまいます。
このとき脳内では、疲労によって情報処理が追いつかず、活性酸素が作られた状態となっています。
この活性酸素は、脳のさまざまな機能に影響を与え、機能の低下を招く有害物質であるため取りのぞく必要があるのです。
活性酸素が脳内に残っていると、思考能力や判断能力が低下するほか、頭がスッキリしないため、イライラして精神状態に影響を及ぼしてしまいます。
睡眠をしっかりとると、脳内で不要な物質を取りのぞく作業がおこなわれるため、翌日には脳がスッキリし、ポジティブな気持ちで1日を過ごすことができます。
3.睡眠が神経のバランスを修復する
私たちが暗くなると眠り、明るくなると目覚められるのは、「自律神経」がバランスよく活動をしているからです。
自律神経には「交感神経」と「副交感神経」の2種類があり、それぞれ役割が決まっています。
交感神経は、おもに「人間の活動」をコントロールしている神経で、交感神経が活発になることによって、私たちは目を覚ましさまざまな活動をすることができます。
つまり、「交感神経は目覚め(覚醒)」を担当している神経なのです。
一方、副交感神経は、「人間の休息」をコントロールしている神経で、副交感神経が活発になることによって私たちは眠気を感じることができます。
つまり、「副交感神経は眠り(休息)」を担当している神経なのです。
人間は、交感神経と副交感神経がバランスよくはたらくことによって、健康的に生活をすることができるのです。
ところが、睡眠不足になると、この自律神経のバランスを大きく乱してしまいます。
そのため、夜になっても眠れない・朝になっても起きれない・日中に眠くなるなど、体内時計が朝と夜で逆転するような状況になってしまうのです。
自律神経のバランスが乱れる原因はさまざまですが、その1つが睡眠不足です。
したがって、睡眠をじゅうぶんにとることができると、体の組織全体の疲れや故障している部分を修復させることができ自律神経のバランスの整うため、翌日からふたたび元気に活動することができるのです。
睡眠の重要性:体のメンテナンス
体においては、おもに「成長ホルモンの分泌を整える」・「血管や筋肉の修復」・「代謝の改善」などのメンテナンスを行い、疲れをとって次の日の活力を養っています。
1.睡眠によって成長ホルモンの分泌が整えられる
レム睡眠・ノンレム睡眠のうち、深い眠りのノンレム睡眠中には、さまざまなホルモンが作られ分泌されていますが、その1つである「成長ホルモン」は、疲労回復や修復に大きく関係している重要なホルモンです。
この成長ホルモンが多く作られて分泌されことによって、1日の疲れを取りのぞくことができるのです。
ノンレム睡眠は、眠り始めて最初にやってくる睡眠であり、5回~6回のサイクルのうち、眠り始めにやってくる1番目のノンレム睡眠が、もっとも深い眠りを作ることができます。
夜眠れないと、成長ホルモンをじゅうぶんに生成・分泌させることが困難となって、翌日にも疲れが残ってしまうわけです。
成長ホルモンは、脳の休養や自律神経のバランを整えるために必要不可欠なホルモンであるため、しっかりと睡眠をとることが大切なのです。
2.睡眠による血管や筋肉の修復
成長ホルモンには体の修復機能があり、睡眠中に傷ついた血管や筋肉を修復させることができます。
栄養バランスの悪い食生活を送っていると、血圧が上昇して血管に負担をかけてしまいます。
また、激しい運動をしたり、普段使うことのない筋肉を急に使うことによって、筋肉を傷めてしまうことがあります。
このような場合、睡眠中に成長ホルモンが傷んだ血管や筋肉を修復させ、さらに筋肉にたまった疲労物質も取りのぞくことができ、翌日には症状を緩和させることができます。
こうしたことから、睡眠は体内の疲労回復に必要不可欠なのです。
3.睡眠による代謝の改善
成長ホルモンは「代謝」にも密接に関係しており、成長ホルモンが分泌されることで新陳代謝がアップし、糖質や脂質を燃焼させて脂肪のつきにくい体に整えていきます。
つまり、よく眠れることによって「太りにくい体質」に改善でき、肥満を予防することができます。
なぜ疲れてるのに眠れないの…?その原因とは?
とても疲れているのに、いざベッドや布団に入って眠ろうとしても、スムーズに眠れないことはありませんか?
疲れきっているにもかかわらず眠れないのには、大きく6つの原因が関係しているのです。
疲れきっているのにもかかわらず眠れないのは、
- ストレス
- 不安
- 体内時計のズレ
- 昼寝
- 病気
などが原因となっている可能性があります。
ここからは、疲れているのに眠れない6つの原因についてご説明しますね。
疲れてるのに眠れない原因1:眠れないのにはストレスが大きく影響している
仕事先や学校などで大きなストレスを受けると、体内のさまざまな組織に悪影響を与えてしまいます。
その1つが「自律神経」です。
ストレスと自律神経は密接な関係にあり、過度なストレスを受けると自律神経のバランスが乱れてしまいます。
自律神経が正常の場合、活動中は「交感神経>副交感神経」となり、睡眠中は「副交感神経>交感神経」となります。
この自律神経のバランスは、自分の意志によって操作できるものではありません。
よく、「深夜に放送されているテレビ番組を最後まで見たいと思っていたのに、気がつくと途中で寝ていた」、「普段は目覚まし時計で目が覚めるが、今朝は自然に目が覚めた」などという経験をするかと思います。
これは、自律神経の操作によって、体が「休息」・「覚醒」を行った証拠であり、このバランスが正常にはたらくことがとても大切なのです。
しかし、大きなストレスを抱えていると、自律神経のバランスが乱れ夜になっても交感神経が活発になっているため眠れないのです。
疲れてるのに眠れない原因2:不安で眠れない
何か心配事があると、常にそのことばかりを考えてしまうことがありますね。
そこで「まあ、いいか!なんとかなるさ」などと思うことができればいいのですが、心配事が大きくなると不安が強くなり、気が付けばそのことばかりを考えてしまいます。
不安が強くなることで、脳はストレスを受けていると判断し、脳内に「ノルアドレナリン」と呼ばれる神経伝達物質を分泌させます。
このノルアドレナリンは、心身を活性化させて興奮状態をつくるほか、集中力を高めたり、認識力や身体能力をアップさせるなどのはたらきをもっています。
つまり、不安や心配が大きくなるとノルアドレナリンが大量に分泌されるため、眠りたいのに眠れない状態になるのです。
疲れてるのに眠れない原因3:恋愛の悩みで眠れない
恋愛において何か悩みを抱えていることはありませんか?
眠れない原因のなかで、恋愛の悩みが関係しているケースは意外に多いのです。
好きな人と初めてメールなどで連絡を取り合うときには、とても緊張しますね。
「メールを送っても返事をくれるかな?」「告白して断られたらどうしよう」など、いろいろなことを考えてしまうものです。
また、付き合っている状況でも、恋愛の悩みはありますね。
とくに、恋人とケンカをした場合には、「どうやって謝ろうかな?」などと考えてしまったり、遠距離恋愛をしている場合には、「恋人が浮気をしないか?」などと不安になったりします。
このような悩みは、周囲が暗く静かになる就寝前に考えてしまう場合が多く、それによって不安が強くなると眠れなくなってしまうのです。
疲れてるのに眠れない原因4:体内時計のズレ
人間には、もともと「睡眠覚醒リズム」と呼ばれる生理現象が備わっていますが、これは、誰もが生まれつきもっている体の仕組みの1つです。
睡眠覚醒リズムは、およそ1日(24時間)サイクルでくり返されていることから、「体内時計」とも呼ばれています。
眠りにつくタイミングは、この「体内時計」によって決められています。
日中に活動したことで溜まった疲労やストレスなどを解消するため、休息をコントロールする副交感神経がはたらいて眠気を起こします。
ノンレム睡眠・レム睡眠の間隔は、朝が近づくにつれて徐々に短くなっていきます。
すると、副交感神経が弱まって交感神経が強くなり、自然と目を覚ますことができるのです。
この「目覚めるための準備」を起こすのが体内時計なのです。
したがって、体内時計にズレが生じると、「夜になっても眠れない」・「朝がやってきても起きれない」といった症状が起こってくるわけです。
疲れてるのに眠れない原因5:昼寝をしてしまったから
体内時計がズレる原因は、「起きる時間が決まっていないこと」にあります。
寝る時間が遅かったり、睡眠時間が短いことでも体内時計がズレてしまう気がしますが、実際には就寝時間や睡眠時間が変わっても、体内時計がズレることはありません。
しかし、起きる時間が一定でないと、覚醒リズム(目覚めへのリズム)が始まる時間がいつも違っているため、24時間のサイクルを作り出すことができなくなってしまうのです。
休みの日に家でのんびりしていると、つい眠くなって昼寝をしてしまうことがありますね。
なかには、毎日昼寝をするという人もいるでしょう。
昼寝をすることによって、脳の疲れを取り集中力を高めることができます。
実際に、兵庫県の中学校では、「10分程度の昼寝の時間」を正式に導入しているところもあり、昼寝を導入したことで生徒の学習能力がアップしたといわれています。
そのため、昼寝をすることは悪いことではありませんが、長時間にわたって昼寝をすると、夜になっても眠れなくなる可能性が考えられます。
昼寝するなら「15時まで」に短時間だけ寝るようにしよう!
昼寝をしてしまうと必ず眠れなくなるというわけではなく、長時間にわたって昼寝をしてしまうことがNGなのです。
ベッドなどに横になりそのまま昼寝をすると、1時間以上も眠ってしまうことがありますね。
このような日は、たいがい夜に眠れなくなるケースが多いです。
また、15時以降に昼寝をすると、体内時計に乱れが生じてしまいます。
そのため、昼寝時間の長い・短いに限らず、夜に眠れなくなってしまう確率が高くなります。
昼寝をする場合には、「15時まで」に「短時間(15分~30分)」で済ますようにしましょう。
疲れてるのに眠れない原因6:病気が原因となっているケース
これら「5つの眠れない原因」に当てはまらない場合、「睡眠に関係する病気」が原因となっている可能性があります。
睡眠に関係する病気は、「不眠症」・「睡眠覚醒リズム障害」・「過眠症」・「睡眠呼吸障害」など、意外と多くあります。
これらの病気にかかっている場合、眠りたいと思っているのに眠れない・眠ってもすぐに目が覚めてしまう・熟睡がなかなかできない・朝起きても疲れが取れていない、など睡眠に大きな影響を及ぼします。
眠れないのは身体的な理由なのか精神的な理由なのかを見分ける!
眠れない原因を知るためには、「身体的な理由」が影響しているのか、それとも「精神的な理由」が影響しているのかを見分けることがもっとも大切です。
眠れない「身体的な理由」について
身体的な理由としては、おもに「胸苦しさ」・「咳・発作」・「頻尿」・「痛み」・「かゆみ」・「脳出血や脳梗塞などの後遺症」といった症状が考えられます。
眠れない身体的理由1.胸苦しさ(高血圧・心臓病)
味の濃い食事や不規則な生活を送っていると、血管に強い圧力がかかり「高血圧」を引き起こします。
ですが、高血圧になったからといって、すぐに胸苦しさを感じて眠れなくなるわけではありません。
高血圧が原因で動脈硬化を起こし、それによって心臓に負担をかけてしまうことで、胸苦しさを感じるようになるのです。
高血圧の状態がつづくということは、「血管が常に強い圧力を受けつづける」ことになり、それが原因で血管はしなやかさを失い、硬くもろくなってしまいます。
この状態を「動脈硬化」といい、この動脈硬化が心臓へとつながる動脈で起こることにより、血管が細くなったりふさがってしまうのです。
動脈硬化が起こると、心臓へと新鮮な酸素や血液をじゅうぶんに遅れない状態となり、心筋梗塞・狭心症などの心臓病を引き起こして胸苦しさを感じるのです。
胸が苦しくなると、呼吸がうまくできなくなるため眠れなくなります。
また、たとえ眠りについたとしても、決して質の高い睡眠はとれません。
血圧が高く、胸苦しさを感じて眠れない場合には、「高血圧(動脈硬化)」や「心臓病」の疑いが考えられます。
眠れない身体的理由2.咳・発作(ぜんそく・気管支炎などの呼吸器疾患)
「ぜんそく」や「気管支炎」などの呼吸器疾患では、咳が止まらなくなったり、呼吸がうまくできずに息苦しさを感じ、眠れなくなってしまいます。
呼吸器疾患の場合、空気が通る気管に炎症を起こっているため、チョットした刺激でも、気管は過敏に反応する状態になっています。
そのような状態で、さらに刺激を受けることによって、気管支(肺へつながる気管が枝分かれした部分)が敏感になって収縮を始めます。
気管が収縮したことで狭くなると、咳が出ると止まらなくなるほか、炎症によって出た痰が気管をふさいでしまうため息苦しさを感じます。
とくに、ぜんそくの場合、眠ることによって発作が起こるという特徴があるため、眠れない・深い眠りができないという症状がでてきます。
気管支炎は、ウイルスが気管支に侵入することによって炎症がおこる病気で、一時的に発症ケースが多いです。
おもな症状は咳や痰ですが、人によっては発熱や全身のだるさなども起こり、眠りに悪影響を与える場合があります。
また、ウイルスが肺に侵入することで肺炎を引き起こす場合もあり、重症化すると呼吸ができないほど苦しくなり、眠ることも困難となります。
眠れない身体的理由2.頻尿(腎臓病・前立腺肥大)
腎臓は、老廃物や塩分などが含まれる血液をろ過して、体に必要なものと不要なものに分けるはたらきがあり、必要なものは再度吸収させたり、不要なものは尿として体の外へと排出させています。
腎臓が正常にはたらくことによって、私たちの体は健康を維持できているわけです。
ところが、腎臓病などで腎臓の機能がいちじるしく低下すると、必要なもの・不要なものの選別ができなくなり、すべて体外へと排出させようとします。
とくに、夜間に腎臓の機能が低下しやすくなるとされ、夜になると何度もトイレへと行きたくなってしまいます。
そのため、眠気がやってきてもすぐに目を覚ましてしまい、なかなか眠りにつくことができなくなります。
眠れない身体的理由3.痛み(糖尿病・関節リウマチ・胃炎など)
体に痛みを感じると、その痛みによって熟睡することは難しいですね。
痛みにはさまざまな原因がありますが、なかでも「糖尿病」・「関節リウマチ」・「胃炎」などは、単に痛いわけではなく、ピリピリ・ジンジン・ズキズキ・チクチクなど、刺すような痛み・焼けるような痛みなどが起こってきます。
こうした痛みがつづくと、「あの痛みがまたやってくるのでは?」と考えてしまい、痛みと不安で眠れなくなってしまいます。
糖尿病でも痛みを感じるの?と思うかもしれませんね。
糖尿病によって、末梢神経(手足の先端へと伸びる細い神経のこと)がこわされる「糖尿病性神経障害」を併発し、その症状が悪化することで上記のような痛みを感じるのです。
関節リウマチは、関節部分の組織に炎症が起こることで、免疫組織の機能が正常にはたらかなくなり、ウイルスではなく自分の組織(軟骨や骨)を攻撃してしまう病気です。
症状が悪化すると、潤滑油の役割をしている組織が大きく腫れ、歩くこともできないほどの激しい痛みを引き起こします。
胃炎は、胃の粘膜になんらかの炎症が原因で起こる病気であり、発症する頻度も比較的高いです。
刺激の強い食べ物や飲み物(辛い食べ物や苦い飲み物など)を大量にとったり、空腹の状態で常用薬を飲んだりすることでも、痛みを感じることがあります。
胃炎になると、胃の周辺がキリキリ・ズキズキと痛み、症状によっては胃もたれ・むかつき、寒気などを感じることがあります。
症状が強く出てしまうと、うずくまるほどの痛みに襲われることがあります。
眠れない身体的理由4.かゆみ(アレルギー疾患・じんましん・乾燥)
「アレルギー性の皮膚炎」・「じんましんなどの皮膚疾患」や、肌が乾燥して肌荒れ状態になると、体中にかゆみが出ます。
かぶれ・じんましんなどのアレルギー性の皮膚炎では、体がアレルゲン(アレルギー反応をおこす物質)に過剰に反応することで起こる皮膚疾患で、強いかゆみが起こります。
かぶれは、皮膚に何らかのアレルゲンと接触したときに起こる場合が多く、じんましんは、皮膚接触のほかに食べ物を摂取したとき・薬を飲んだ時などに起こり、体の内外に関係なくかゆみが起こってきます。
乾燥肌では、とくに「アトピー性皮膚炎」は、我慢できないほどのかゆみが起こるため、熟睡することが難しいです。
アトピー性皮膚炎の場合、強いかゆみに我慢できなくなってかいてしまうケースが多く、かくことでかゆみがさらに強くなり、皮膚が傷ついて出血することもあります。
このような状態にまで悪化してしまうと、リラックスして眠ることはできません。
眠れない身体的理由5.脳出血や脳梗塞などの後遺症など
「脳出血」や「脳梗塞」などの脳疾患を発症すると、その後遺症として「不眠」に悩まされることがあります。
脳の病気のなかで、脳出血や脳梗塞などのような脳血管の病気では、治療を行っても脳の血管や神経に損傷をあたえる可能性が高く、それが原因で脳の機能が低下して後遺症が残ってしまうのです。
障害が自律神経や体内時計をコントロールしている部分起こると、その機能が正常に機能しなくなって体内時計乱れが生じます。
体内時計が乱れてしまうと、「昼間に活動して夜間に休養する」という1日の概日リズムがくるってしまい、夜がきても眠れなくなる場合があります。
眠れない「精神的な理由」について
精神的な理由としては、そのほとんどが「ストレス」・「自律神経の乱れ」だと言えます。
眠れない精神的理由1.ストレス、自律神経の乱れ
強いストレスを受けたり、毎日のようにストレスを感じていると、気持ちが落ち込んでしまい前向きに考えることができなくなります。
さらに、その状況が悪化すると自律神経のバランスがくずれ、眠りのリズムが大きく乱れてしまいます。
本来ならば、寝る時間が近づくにつれて交感神経の活動が弱まり、副交感神経の活動が強くなっていきます。
しかし、自律神経のバランスが乱れてしまうと、眠る時間になっても交感神経が活動していることになり、脳の興奮状態がおさまらないため眠ることができないのです。
自律神経の乱れはさまざまな要因で起こりますが、とくにストレスを受けることで大きく乱れてしまいます。
眠れない理由のほとんどは精神的なものが多い!
ここまで、眠れない理由について、身体的・精神的の両面から紹介してきましたが、これらのなかで、もっとも多いとされるのが「精神的要因」です。
不安・悩み・心配事があると、それが気になってしまい寝つけなくなることがあります。
また、過度なストレスを受けることによって自律神経のバランスは大きく乱れ、眠りたくても眠れない状況を作り出してしまうのです。
医療や健康に関するWebサイトにおいて、233名の精神科医・心療内科医に「不眠の原因に関するアンケート」を実施され、その結果が公表されていました。
アンケート結果によると、233名の医師のうち156名(67%)の医師は「精神的要因」が関係していると回答し、次いで「生活リズムのくずれ」が40名(17%)、その他(コーヒーやお酒・環境の変化・病気など)が37名(16%)となっています。
この結果からも、眠れない理由の多くは、精神的要因が関係していると言えます。
眠れない原因に病気が疑われるときには病院で診断してもらうこと!
病気のなかには、「睡眠に関係する病気」がいつくかあります。
たとえば、「不眠症」・「過眠症」・「睡眠覚醒リズム障害」・「そのほかの睡眠障害」・「睡眠呼吸障害」などがあります。
こうした病気の場合、病気を改善することによって眠れない症状も改善することがあります。
そのため、ここで紹介する病気が疑われる場合には、迷わず病院で診断してもらいましょう。
眠れない原因となる病気1.不眠症
「寝たいのに寝つけない」・「眠り始めてもすぐに起きてしまう」・「普段よりも目が覚めるのが早い」・「熟睡できたと実感できない」という症状が重なり、何日もつづきます。
このような症状が続くことによって、「今夜もまた眠れないかもしれない」と不安になり、それが原因で眠りのリズムがくるってしまい、さらに眠れない状況を作り出してしまうのです。
不眠症の原因には「年齢のせい」もある!?
不眠症になる原因は、精神的要因が関係している場合が多いですが、その他の要因として「年齢」が関係している場合があります。
とくに、高齢者が不眠におちいるケースも少なくありません。
高齢者が悩む不眠症について
不眠症は、20代~50代の比較的ストレスを受けやすい世代だけに発症するわけではありません。
60代以降の高齢者でも、不眠症で悩む人が多いのです。
60歳をすぎると、眠れないと感じる人が増加する傾向にあり、「80代では3人に1人」の人が、眠りに対してなんらかの悩みをもっているといわれています。
年齢を重ねると、さまざまなホルモンの分泌量が減少していきますが、そのなかには、眠りをうながす「メラトニン」とよばれるホルモンもふくまれています。
つまり、年齢を重ねるとメラトニンの分泌量が減少するため、不眠症になってしまうわけです。
眠れない原因となる病気2.睡眠覚醒リズム障害
人間には、「夜になると眠り、朝になると目覚める」という、「睡眠覚醒リズム」が備わっていることを説明しましたね。
この睡眠覚醒リズムがくるってしまうと、体内時計にも乱れが生じて「夜に眠れない」・「日中に眠くなる」・「仕事や作業の効率が悪くなる」など、日常生活に支障が出てきます。
眠れない原因となる病気3.過眠症
お昼ごはんを食べた後には、睡魔におそわれることがありますね。
この症状は、誰にでも起こる生理現象であり、睡眠障害ではありません。
しかし、強い眠気が「場所」や「時間帯」に限らず起こる場合には、「過眠症」という病気が関係している可能性があります。
過眠症は、普段は起きている日中に強力な睡魔におそわれる状態で、それが「どこでも」・「どんなときでも」起こるため、日常生活にも支障をきたしてしまいます。
たとえば、大切な取引先との商談の際中や車の運転中など、普段であれば絶対に眠ることのない状況であっても、強力な睡魔におそわれて眠ってしまうこともあります。
眠れない原因となる病気4.その他の睡眠障害
- 周期性傾眠症(しゅうきせいけいみんしょう)
周期性傾眠症とは、過眠症の症状が長びくことによって、日常生活のうちトイレタイム以外は、ずっと眠っているという症状です。
- ナルコレプシー(居眠り病)
過眠症の症状がさらに強くなった状態で、発作のようにその場で急に眠ってしまうとナルコレプシーの可能性があります。
ナルコレプシーは、いつ・どこで・どんなときに発作が起こるのか判断するのが困難なため、通常の生活を送れなくなる場合があります。
- 睡眠時遊行症(すいみんじゆうこうしょう)
おもに、10歳未満の子供に多い睡眠障害で、一般的に「夢遊病(むゆうびょう)」と呼ばれています。
睡眠時遊行症は、眠っているときにもかかわらず、急に起き上がって歩き回ったり、話し出したりする症状で、脳が休養状態になっているノンレム睡眠時に起こります。
- 睡眠時驚愕症
別名「夜驚症(やきょうしょう)」とも呼ばれ、眠っているにもかかわらず大声で泣き叫びます。
この症状も、睡眠時遊行症と同じようにノンレム睡眠時に起こり、10歳未満の子供に多い症状です。
- レム睡眠行動障害
夢遊病と夜驚症は、おもに10歳未満の子供に多くみられる症状ですが、50代以降の年代にも似たような症状があります。
50代以降に起こる異常行動が「レム睡眠行動障害」です。
レム睡眠行動障害は、「眠っている状態で歩き回る」「大きな声を出して叫ぶ」という、夢遊病と夜驚症を合わせたような症状が起こります。
一見すると夢遊病・夜驚症と同じにみえますが、この2つの睡眠障害はノンレム睡眠時に起こります。
このとき、脳は休息状態となっているため夢は見ることはなく、目覚めても睡眠中のことは一切覚えていません。
レム睡眠行動障害は、その名の通り「レム睡眠時起こる」睡眠障害で、脳が起きている状態なので夢を見ているのです。
そして、その夢のストーリーに合わせて眠りながら行動を起こすのです。
したがって、目覚めた時には、睡眠中にしていた行動を記憶として残しているケースが多いのです。
眠れない原因となる病気5.睡眠呼吸障害
睡眠中に、普段とは違う異常な呼吸をする症状を総括して、「睡眠呼吸障害」といいます。
睡眠呼吸障害の代表的なものに「睡眠時無呼吸症候群」があり、睡眠中に大きな「いびき」をかき、その直後に「呼吸が止まる(呼吸が弱まる)」という特徴的な症状が起こります。
睡眠中に、無呼吸(呼吸が止まる)・低呼吸(呼吸が弱まる)が、1時間に5回以上起こる場合には、睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いです。
日本では、総人口のおよそ2%の患者数だといわれており、総人口を1億3,000万人として単純に計算しても、260万人もいることになります。
睡眠中に症状が起こるため本人が気づかないケースが多く、260万人の患者数のうち治療をしていない人・症状に気づいていない人は、実に180万人にものぼります。
うつが眠れない原因となっているケースもある!

うつ病の人が眠れないと思っている場合には、病気が眠りをさまたげてしまっていると考えられます。
なぜなら、不眠はうつ病の症状の1つであり、患者の大多数が「眠れない」と訴えているからです。
うつ病は、「朝から正午前までに重症化する」ケースが多いですが、それを引き起こしているのが不眠だといわれています。
うつ病になると、気持ちが急激に落ち込んだり、自分はダメな人間だと自責の念にかられるなど、ネガティブな気分になりがちです。
ネガティブな気持ちは心身に大きなストレスを与え、自律神経のバランスや体内時計が大きく乱れてしまいます。
すると、脳が休息状態にならないため眠れず、不眠に陥ってしまうのです。
病院で処方された薬で眠れるようになることもある!
睡眠障害によっては、治療薬を服用することで、不眠を改善できるケースもあります。
「重度の不眠症」では、睡眠へと導く治療薬と、精神状態を安定させる治療薬の両方を使用して、リラックスした状態から眠りへといざなう治療が行われます。
「レム睡眠行動障害」では、異常行動が起こりやすいレム睡眠の時間を、治療薬によって短くさせおだやかな眠りがつづくようにします。
また、異常行動をおこさないよう、筋肉の緊張をほぐす役割をする治療薬がつかわれることもあります。
治療薬のなかには、中枢神経に刺激をあたえて効果を得るものもあり、こうした薬はとても依存性が高いとされています。
そのため、眠れないときに薬を使う場合には、なるべく依存や副作用がおこらないものが適しており、効果はおだやかですが眠りの症状に合わせてつかえる「漢方薬」がオススメです。
眠れない時におすすめの漢方薬とは?
眠れないときにおすすめの漢方薬はいくつかありますが、使う際には自分の体質や症状に合わせて選ぶ必要があります。
ここで、眠れないときに効果的な漢方薬を、体質や症状に合わせていくつかご紹介しますね。
おすすめの漢方薬①体力・抵抗力がある場合
- 黄連解毒湯(おうれんげどくとう):のぼせ・イライラ感によう不眠
- 三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう):高血圧による不眠(のぼせ・精神不安定など)
- 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう):高血圧による不眠(精神不安定・便秘など)
※寝つきが悪いときには「三黄瀉心湯」や「黄連解毒湯」が効果的で、精神的理由で眠れないときには「柴胡加竜骨牡蛎湯」が効果的です。
おすすめの漢方薬②体力・抵抗力が比較的ある場合
- 抑肝散(よくかんさん):興奮状態・イライラ感による不眠
※「抑肝散」は、寝つきが悪いときに効果的です。
おすすめの漢方薬③体力・抵抗力がない場合
- 加味逍遙散(かみしょうようさん):肩こり・のぼせ・疲労感・精神不安定などによる不眠
- 加味帰脾湯(かみきひとう):顔面そう白・心身疲労・精神不安定などによる不眠
- 帰脾湯(かみきひとう):心身疲労・顔面そう白による不眠
- 酸棗仁湯(さんそうにんとう):精神不安定・心身疲労による不眠
- 柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう):貧血・冷え症・神経興奮などによる不眠
- 抑肝散化陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ) :神経興奮による不眠
※寝つきが悪いときには「酸棗仁湯」や「抑肝散化陳皮半夏」、夜中や早朝に目が覚める・熟睡できないときなどには「加味逍遙散」、精神的理由で眠れないときには「加味帰脾湯」・「帰脾湯」・「柴胡桂枝乾姜湯」などが効果的です。
眠れない時に無理に眠ろうとするとさらに眠れなくなる!
眠りたいのに眠れないとどうにかして眠ろうと努力するのですが、眠ろうと思えば思うほど目が覚めてしまい、さらに眠れない状況に陥ってしまいます。
このような状況が、2日~3日程度であれば問題はありませんが、月単位で続く場合には「精神生理性不眠症」の可能性が考えられます。
精神生理性不眠症とは?眠れない時には疑ってみよう!
「精神生理性不眠症」とは、身体的または環境面の問題ではなく、精神的・心理的要因によって不眠がつづき、それ以降「今夜もまた眠れないのでは?」という不安や緊張が強まって、1か月以上にわたり眠れない状態がつづく症状をいいます。
この不眠症診断では、2つの国際的基準が決められています。
- 1.眠りをさまたげる心理的要因を脳が記憶している
- 眠るときになると、自分が受けたストレス要因や不安要素を思い出してしまい、眠れない状態に陥ってしまいます。
- 2.眠れないことへの不安が強くなり心身が緊張状態になる
- 寝るときになると1のような状態になってしまうため、「今夜も眠れないのではないか?」と不安がつのり、それが原因で心身が緊張した状態になってしまいます。
精神生理性不眠症におちいりやすい人には、「責任感がつよい」・「神経質」・「何事も完璧にこだわる」・「眠ることに関心がない」などの共通点があります。
このような場合、たとえ不眠を引き起こした根本の心理的要因が解消されたとしても、眠れない状態は慢性化してしまっているため、不眠症だけが残ってしまうことになります。
布団の中=眠れない不快な場所と脳が記憶してしまう
精神生理性不眠症の国際的診断基準の1つに、「眠りをさまたげる心理的要因を脳が記憶している」とご説明しましたね。
それと同時に、脳は「布団の中に入ると眠れない」とも記憶しています。
つまり、眠れない状況が1か月以上もつづくことで、「布団の中=眠れない不快な場所」と認識してしまうのです。
そのため、布団に入ると不安が強くなったり体が緊張状態になってしまい、どうにかして眠ろうと努力しても眠れないのです。
この不快な記憶をなくすためにも、眠気がないうちから寝室に行くのではなく、眠気を感じてきたら寝室に行くようにしましょう。
そして、眠気を感じられるような環境を整えることにも心がけましょう。
リラックスすることが眠れない時に一番大事なポイント
心身が緊張していると、脳は活発にはたらいている状態にあるため、眠ろうとしても眠くなれません。
眠気を感じるためには、脳が休養状態になり体温が下がることが大切であり、そのためにも「心身をリラックスさせること」が、もっとも大事なポイントです。
眠れない時にやってはいけないNG習慣
眠りたいのに眠れないのは、日ごろ何気に行っている習慣が関係している場合もあります。
というのも、生活習慣のなかには「眠りをさまたげるNG習慣」が、いくつかあるからです。
ここでは、「やってはいけないNG習慣」について、くわしくご紹介していきますね。
眠れない原因となる習慣 その1.アルコールの飲みすぎ
お酒をのむと、アルコールの作用によって眠くなってしまうことがありますね。
そのため、眠れないときにアルコールを摂取することで眠れるようになるのでは?と、「寝酒」をしがちです。
大量のアルコールを短時間のうちに摂り入れると、体内では脳の活動が抑制されて休養状態になり、眠気がおこってきます。
これが、お酒を飲んだ後に眠くなるしくみであり、一見すると、眠れないときには効果を発揮してくれるように感じます。
しかし、アルコールには他にもさまざまな作用があり、その作用が起こることで眠りをさまたげてしまう可能性もあるのです。
たとえば、毎日大量のアルコールを摂取して眠気を作り出している場合、アルコールには高い依存性があるため、それを習慣とすることでアルコール依存症を引き起こす可能性があります。
アルコール依存症になると、さまざまな症状が現れてきますが、そのなかには不眠もふくまれているのです。
そのため、大量のアルコールを摂取することはオススメできません。
眠れない原因となる習慣 その2.お茶やコーヒーなどのカフェイン飲料の飲みすぎ
眠る前に温かい飲み物を飲むことは、眠気を促進させるとしてオススメな方法とされていますが、「温かい飲み物ならば何でもいい」というわけではありません。
お茶(緑茶)やコーヒーなどには、覚醒用のあるカフェインがふくまれています。
寝る前にカフェインがふくまれた飲み物を飲むと、脳を活性化させ眠気を遮ってしまうため、眠れなくなる可能性が考えられます。
また、入浴後にのどが渇いて、お茶を飲んでしまうことがありますね。
入浴した時間が、寝る前でなければ問題はありませんが、寝る前に入浴した場合には、そのあとの飲み物は「ノンカフェイン」のものにしましょう。
眠れない原因となる習慣 その3.睡眠直前に脳に刺激を与える行為
テレビゲームやゲームアプリを始めると、つい長時間やってしまうことがありますね。
とくに、クリアできなかった場面がクリアできると、面白さが増してどんどん進めたくなります。
このとき、脳内ではゲームから刺激を受けて「ドーパミン」・「セロトニン」などの神経伝達物質が大量に分泌されています。
ドーパミンは、意欲・向上心・快楽などをコントロールしているホルモンで、別名「快感ホルモン」とよばれています。
このドーパミンが大量に分泌されることによって、「ゲームをもっとやりたい!」「この場面をクリアさせたい!」などという欲求が生まれ、脳のはたらきがアップしてしまいます。
セロトニンは、満足感・爽快感・充実感などをコントロールしているホルモンで、別名「幸福ホルモン」とよばれています。
セロトニンが大量に分泌されることによって、満足感や充実感にみたされるため前向きに考えられるようになり、ストレス解消に効果的とも言えます。
しかし、長時間脳に刺激を与えすぎると、大量に分泌されたドーパミンやセロトニンが、眠気を抑制させてしまうためオススメとは言えないのです。
眠れない原因となる習慣 その4.時計を何度も見てしまう
不眠の種類の1つに、夜中に何度も目が覚めるという症状がありますが、こうした不眠症状をもつ人のなかには、「目が覚めるたびに時計を見てしまう」という人がいます。
1度くらいならばとくに影響はありませんが、目が覚めるたびに時計を見てしまうと、「さっき目が覚めてから〇時間(○○分)しか経っていない」などと、睡眠時間の長さばかりを気にしてしまうようになります。
すると、「眠ってもまたしばらくすると目が覚めてしまうのでは?」という不安がおこり、心身の緊張状態を作り出してしまいます。
たとえ、短時間でも質の高い眠り(深い眠り)ができていたとしても、緊張状態になることで、それ以降の眠りの質は低下してしまいます。
そのため、夜中に目が覚めてしまっても時計を気にしないようにしましょう。
眠れない原因となる習慣 その5.考え事をしてしまう
考え事をしているときは、脳が活発にはたらいている状態です。
寝る前に考え事をすると、そのことが気になって眠れなくなる可能性があります。
心にもやもやがあると眠れない原因となりやすい
考え事がすぐに解決すれば問題ありませんが、すぐに解決できず心にもやもやが残ってしまうと、眠れなくなりやすいです。
気になっていることが解決しないと不安になり、やがてそれがストレスへと変わり眠れなくなるのです。
そのため、心にもやもやがあるときには、なるべく心を落ち着かせることが大切です。
眠れない原因の悩み事が何かを紙に書き出してみると楽になる!
心にもやもやが残っているときには、心に引っかかっているものが何なのかを知ることで、落ちつく場合があります。
たとえば、気になっていることを紙に書き出してみましょう。
悩み事があるとき、家族や友人に相談すると、気持ちが楽になることがありますね。
これは、心の中に溜まっていたもやもやが、第三者に話すことでなくなりスッキリするからです。
この効果は、紙に書き出すことでも得られる場合があります。
心がもやもやして眠れないときには、試してみることをオススメします。
眠れない原因となる習慣 その6.入浴後にすぐ布団に入るのはNG
寝る時間が近づくと、体内時計が体内の熱を放出させ、休養状態を作り出すようにはたらきかけます。
これによって、体温が下がっていき眠気が起こってくるのです。
入浴後すぐに布団に入ってしまうと、体温が上がったままの状態をキープしてしまうため、体温がなかなか下がらず眠気が起こってきません。
眠気が起こりやすいのは、入浴後から2時間ほど経過したころです。
したがって、入浴は寝る時間の2時間前に済ませるようにし、これを習慣づけることによって、自然と眠気がやってくるようになるでしょう。
眠れない原因となる習慣 その7.眠気がないのに早く床に入る
眠くないのに床に入ると、いろいろと考えてしまうことがありますね。
とくに、今日一日のできごとを思い返すことは多く、大きなミスをしたり人間関係でトラブルが起こったりすると、「どうして、あんなことをしてしまったのだろう」とか、「自分には向いてないのでは?」などと反省をしがちです。
このような反省は、考え事をしているときと同じ状態であるため、交感神経のはたらきが活発になって脳も刺激を受けてしまい、この状態で眠ろうと頑張っても眠ることは不可能です。
そのため、眠気がおこってから床に入るようにしましょう。
眠れない原因となる習慣 その8.スマホの画面を見る
寝る直前までスマートフォンをいじったりはしていませんか?
寝る前にスマーフとフォンの画面を見ていると、睡眠のリズムをくるってしまい眠れなくなる可能性があります。
人間の体内時計は、暗くなることで脳から「メラトニン」とよばれる睡眠促進ホルモンを分泌させます。
メラトニンがたくさん分泌されるほど、熟睡できるようになります。
ところが、寝る直前までスマートフォンの画面を見ていると、スマートフォンから放出される「ブルーライト」が、メラトニンの分泌を抑制して寝つけない状況を作り出してしまうのです。
ブルーライトにはコーヒー以上の覚醒効果があるといわれており、とくにスマートフォンは、「液晶テレビの約2倍」のブルーライトが放出されているといわれています。
また、寝る前にメール確認をすることは、「コーヒー(エスプレッソ)を2杯飲んだときと同等の覚醒効果がある」という研究結果も出ています。
つまり、布団の中でスマートフォンをいじることは、テレビの2倍のブルーライトを浴びていることになり、その覚醒効果はエスプレッソコーヒー2杯分に相当するということになります。
そのため、スマートフォンを使うのは「寝る2時間前まで」とし、寝室に持ち込むことはやめましょう。
まとめ:原因を知って改善をしよう!病気が原因の場合はすぐに病院へ!
眠りたいのに眠れない原因は、生活習慣の乱れや病気などさまざまありますが、そのなかでも、不安やストレスなどの精神的要因が大きく関係しています。
ストレスなどで気持ちが落ち込むことによって、1日の生活のリズムを決める体内時計に大きなズレが生じてしまいます。
体内時計のサイクルがズレてしまうと、いくら寝ようとがんばっても、睡眠ホルモンであるメラトニンがじゅうぶんに分泌されないため、眠ることができないのです。
眠れない状況がつづくと、「今夜も眠れなかったらどうしよう」と不安になり、さらに眠れない状況を作り出してしまいます。
このページでは眠れない原因について詳しく解説しましたが、眠れるようになる対策については別ページでさらに詳しく掘り下げていきますので、ぜひ時間を作って読んでみてくださいね。